文書・書類管理の重要性と目的は?|管理・分類方法や電子データ化についても解説
文書・書類管理とは
文書・書類管理はつい疎かになりやすい部分ですが、目的と重要性を知っておくと円滑に進められます。ここでは文書管理と書類管理の違いや、文書・書類管理を行う目的と重要性について見ていきましょう。
文書管理と書類管理の違い
似た言葉である文書管理と書類管理ですが、どのような違いがあるのでしょうか。混同して使用している人も多いですが、文書管理と書類管理の意味は以下のとおりです。
- 文書管理:社内や組織全体で管理体制されている資料を、スムーズに利用できるよう整理整頓すること
- 書類管理:組織全体に共有されていない個人の資料を使いやすく整理整頓すること
文書は会社や組織規模、書類は個人規模と、対象範囲が異なるものだと認識しておきましょう。文書管理とは、組織全体で共有している資料をわかりやすく整理整頓することです。この後見ていきますが、多くの人に閲覧される資料であるからこそ、文書はわかりやすく取り出しやすい状態で、整理されている必要があります。
また個人で管理されている書類にも有益な情報が含まれている場合があるため、自分しか見ないであろうと乱雑にせず、いつでも欲しい情報が取り出せるように整頓しておきましょう。
文書・書類管理を行う目的と重要性
文書・書類管理を行う目的は、大きく以下の2つに分けられます。
- 必要な書類やデータをすぐに取り出せるようにするため
- 機密情報や個人情報など、漏えいが許されない文書を整理するため
文書・書類管理を行う目的は、必要な書類のデータをすぐに取り出せるようにするためです。いくら有効な資料があっても、作業者がしっかりと場所を把握しておかなければいつまでも見つけ出せず、業務に遅れが生じてさまざまな部署や関係者の負担になってしまいます。
また機密情報や個人情報などが漏洩してしまうと、取引先や顧客に大きな損害を与えかねません。文書・書類管理のもう一つの目的は、機密情報や個人情報などの情報漏えいが許されない文書を見分け、整理することです。
管理方法を社内で一貫し、誰でも整理して使えるフローを確立しておけば、2つの目的が果たせます。文書・書類管理は、業務の効率化や、企業のコンプライアンス強化に重要といえるでしょう。
文書・書類管理をするための基本
文書・書類管理をするための基本は、以下の3つの基本を頭に入れておく必要があります。
- 文書・書類のライフサイクルを把握する
- 管理方法をルール化する
- 文書・書類の保管期間を定める
順番に見ていきましょう。
文書・書類のライフサイクルを把握する
文書や書類を管理するための基本は、文書や書類のライフサイクルを把握することです。文書や書類は作成されてから処分されるまで、以下のサイクルを辿ります。
- 作成・受領
- 整理・活用
- 保管・保存
- 処分(廃棄または長期保存)
作成され受領された文書や書類は、最終的には廃棄や長期保存の処分となるまで整理・活用され、保管や保存されます。文書や書類を管理する人は、ライフサイクルを把握し、それぞれのプロセスや位置づけの特徴を理解しておきましょう。
管理方法をルール化する
文書や書類管理を適切に行うために、管理方法をルール化しておくことも基本です。すでに多くの企業では、確立された文書管理規則や文書管理規程などが存在しているところもあります。
しかし「ルールがあってもどのようなものか分からない」「存在自体知らない」といった社員が多く存在している企業であればあるほど、文書や書類管理はずさんなものとなり、作業効率が悪くなったり情報漏えいの危険が高まったりするでしょう。
重要性でも述べましたが、管理方法を疎かにしてしまえばコンプライアンス違反も問われ、社会的信用を失うことにも繋がりかねません。
まず文書管理・書類管理を行う際は、すでに確立されているであろう自社の管理方法をもう一度読み込んでみましょう。分類方法や管理方法に疑問がある場合、より良い案を出し、文書・書類管理が最適な方法で行われるよう模索してみてください。
文書・書類の保管期間を定める
文書・書類管理をするための基本として、保管期間を定めることも大切です。保管している書類の作成日が古かったり、しばらく閲覧されていないものであるからといって、むやみに廃棄することは避けましょう。
また自社で保管期間を定めるのではなく、書類の特性上、永久的に保管が必要であるものや、法的に保管期間が定められている文書や書類もあります。
- 永久保存が必要な文書
- 保存期間が5年以上10年以下の文書
- 保存期間が1年以上5年未満の文書
それぞれの代表例を見ていきましょう。
永久保存が必要な文書
永久保存が必要な文書の代表例は、以下の5つです。
- 定款(ていかん):法人の目的や名称、社員、期間、資産などが記された根本的な規則
- 株主名簿:株主に関する事項を明らかにする帳簿。会社法の規定により、作成が義務付けられている
- 官公庁への提出文書:官公庁から発行された許可書や認可書、通達など
- 知的所有権に関する情報:特許証・登録証・特許料や登録料の受領書など
- 登記や訴訟関係書類:土地の権利書・訴訟関係など
上記は特別に法的に規定されているわけではありませんが、会社を続けていく以上必要なものばかりであるため、永久的な保存が推奨される文書です。保管の定めがないからといって軽々しく扱わないように注意しましょう。
保存期間が5年以上10年以下の文書
保存期間が5年以上10年以下の文書は、以下のとおりです。
<保存期間10年の文書>
- 株主総会議事録:仕訳帳や総勘定元帳、各種補助簿など
- 計算書等:賃借対照表や損益計算書、株主資本変動計算書、個別注記表など
<保存期間7年の文書>
- 取引に関する帳簿:仕訳帳や現金出納帳、固定資産台帳、売掛帳、買掛帳など
- 決算に関する書類:棚卸表や損益計算書など
<保存期間5年の文書>
- 監査報告書:監査人による報告書
- 会計監査報告書:監査人による報告書
どれも会社の経営状況をあらわすための文書で、大切なものです。ずさんに管理せず、この後紹介する分類方法や管理方法を参考に、定められた期間しっかりと保管しておきましょう。
保存期間が1年以上5年未満の文書
保存期間が1年以上5年未満の文書は、以下のとおりです。
<保存期間3年の文書>
- 労働者名簿:働き手である労働者の名簿。ほか賃金台帳や雇入れ、解雇、退職に関する書類も同様
- 労災保険に関する書類:ほかにも労働保険の徴収状況や、納付等の関係資料も同様
<2年間は保存しておく必要がある文書>
- 雇用保険、健康保険、厚生年金保険に関する書類:労働者の雇用や健康、年金に関する書類
上記のほか、法的な規定がなくても履歴書などの労働者に関する情報は、労働者が企業に属する限り保存しておくことをおすすめします。なんの書類をどの程度保管しておくことが必要か、曖昧になっている場合は社内で検討し、早急に期間を定めましょう。
文書・書類の分類方法
文書や書類を適切に管理するためには、以下の4つの分類方法を知っておくことが大切です。
- バイタル情報資産
- アーカイバル情報
- 個人情報
- セキュリティレベル
順番に見ていきましょう。
バイタル情報資産
バイタル情報資産とは、企業の保有する情報資産のうち、最上位に位置づけられるものです。たとえば地震や水害、火災、盗難などのリスクが起きた際などに、事業を継続していくために不可欠な文書ととらえておきましょう。
- 経営者のサインや捺印のある原本
- 法律で保存が義務付けられているもの
上記の文書は他に代えがきかないため、厳重かつ、探したときにすぐに分かるように保管する必要があります。
アーカイバル情報
アーカイバル情報とは、企業の歴史に関わる重要な文書です。
- 創業者の理念や経営方針
- 合併の歴史
- 工場などの建設に関する情報
- 重要な行事に関する記録
上記はたとえ経営者が代わったとしても、受け継いでいかなければならない重要な情報です。定めた保存期間が満了したとしても長期保管が必要と考え、厳重に管理しておきましょう。
個人情報
個人情報とは、生存する個人に関する情報です。自社で働く個人だけでなく、取引先や業務委託先などの関わるすべての個人データを指しています。
- 氏名
- 住所
- 出生
- 犯罪
- マイナンバー
- 社内評価など
個人情報が漏洩して外部の者の手に渡ってしまうと、悪用されてしまう可能性もあります。決して情報が自社と関係のない第三者に知られぬよう、厳重に管理しておきましょう。
セキュリティレベル
上記のほか、すべての文書はセキュリティレベルごとに大きく3つに分類し、それぞれ適切な保管方法を実践することが重要です。
- 極秘文書:漏洩してしまえば、企業や取引先に直接ダメージを与えてしまう恐れのある情報を含んだ文書。未発表の研究内容や、合併などのプロジェクト資料などが該当
- 秘文書:極秘文書ほどではないものの、社内でも限られた人物にしか知らされていない情報を含む文書。契約書や人事関連の情報などが該当
- 社外秘文書:社内で共有されているものの、社外に漏洩すると不利益を被る可能性のある情報を含んだ文書。自社調査の結果や顧客リスト、営業企画書などが該当
自社で取り扱うすべての情報は、必ず厳重に管理しておく必要があります。しかし作成から廃棄まですべての情報を同じレベルで扱うことは難しいため、セキュリティレベルを設定し、優先度を決めることが大切です。
文書・書類の管理方法
文書・書類を管理するには、文書をファイルやボックスで管理するファイリングシステムと呼ばれる方法と、電子データにして保管する方法があります。ファイリングシステムの方法3つと、電子データの保管について見ていきましょう。
バーチカルファイリング
バーチカルファイリングのバーチカルとは「垂直」を意味し、紙製のフォルダーやプラスチックのクリアフォルダーなどの個別フォルダーに書類を挟むだけの方法です。文書をフォルダーに挟み込むだけなので手軽である上、かさ張らないため広いスペースも必要としません。
ただし文書を挟んでいるだけで綴じているわけではないため、紛失しやすいリスクがある点がデメリットと言えるでしょう。バーチカルファイリングを実践する場合、挟むファイルのタブには書類名を記入しておくと、書類が素早く取り出せます。
ぜひ実践してみてください。
簿冊式ファイリング
簿冊式(ぼさつしき)ファイリングとは、バインダーなどに書類を綴じて管理する方法です。昔から見られる管理方法ですが、書類に穴を開けてしっかりと管理できるため、紛失のリスクは少ないといえます。
バインダーは丈夫なぶん厚みがあるものも多いため、ある程度の保管スペースが必要です。バインダーの背表紙部分にどのような文書を挟んでいるものか記入しておくと、目的の書類をすぐに見つけられるでしょう。
ボックスファイリング
ボックスファイリングとは、上記で紹介したバーチカルファイリングに似た管理方法で、紙製のフォルダーに挟み込んだ書類をさらに箱型のボックスに入れていく方法です。ボックス分のスペースが必要になりますが、タブに書類名を記入しておけば検索性が高く、またボックスに余裕があれば書類と関係のある物品も一緒にしまっておけるため、利便性が高いといえるでしょう。
電子データで保管する
ファイリングの他、電子データとして保管する方法もあります。具体的に電子データとは、PCなどを使用して作成した文書である「電子文書」や、紙で作成した文書をスキャンした「電子化文書」です。
電子データを専用のシステムで管理する方法は、特に電子化を進めている企業であれば知っておくべき方法でしょう。ここからは、具体的に文書を電子データ化するメリットやデメリットを紹介します。
文書を電子データ化するメリット・デメリット
いくつかの管理方法がある文書や書類ですが、電子化を視野に入れている企業は、電子データとして保管することも考えるべきでしょう。文書や書類を電子データ化するメリットとデメリットを解説します。
メリット
紙代・印刷代のコスト削減
文書や書類を電子データ化するメリットとして、紙代や印刷代のコスト削減が挙げられます。文書を紙に印刷せず電子データとして保存するだけで、以下の費用が削減できます。
- 紙代
- 印刷代
- 印刷機器のメンテナンス費用
- 資料の郵送費用* 廃棄費用
紙で印刷して保管する文書は紙代や印刷代のほか、印刷機器のメンテナンス費用、印刷した資料を送る際には郵送費用がかかります。廃棄方法も自社でシュレッダーをかけるのであれば電気代や人件費、業者に依頼する場合でも作業コストがかかるため、電子データ化して保管するだけで、多くのコストが削減できるでしょう。
関係者間の共有の効率化
文書や書類を電子データ化するメリットは、コストの削減だけではなく、共有の効率化も挙げられます。共有の効率化とは、文書の同時閲覧が可能である点です。
紙で保管された文書の場合、基本的には同時閲覧はできません。別部署にいる場合はもちろん、同じ部署にいたとしても、文書に書かれた必要な情報を複数人の人間が一緒に読み取るのは難しいでしょう。
しかし電子データの場合、閲覧したい人間が何人いても、PCさえあれば可能です。文書の閲覧を必要とすればするほど効率は上がり、スピード感を持って仕事ができます。
保管スペースの削減
文書や書類を電子データ化すれば、ファイリングで必要としていた保管スペースが空けられます。社員人数が多かったり企業としての歴史が長い会社の場合、保管しておかなければならない書類も増えるため、保管スペースは広く取らなければなりません。
電子データであればPCに情報を集約できるため、保管スペースやファイル、キャビネット、ラックなど、紙での保管に関わるすべてのものが削減できます。
デメリット
システムの導入コストがかかる
文書を電子化するためのデメリットは、システムの導入コストがかかる点です。電子化しようと思い立ったらすぐにすべての文書や書類を電子化できるわけではなく、文書の登録を行なったり、検索機能、セキュリティ機能、ワークフロー機能などを搭載したシステムを導入したりする必要があります。
また導入コストだけでなく、システムを扱う人間の人件費がかかるほか、導入を代行してくれる業者に依頼する場合は、アウトソース費用も必要です。
電子化ができない文書がある
すべての文書を電子化できれば、上記で述べたメリットを最大限享受できますが、電子化できない文書がある点も知っておくべきポイントです。たとえば電子帳簿保存法の要件を満たさない経理関係書類などは、未だ多くの場合、電子文書では有効とは認められません。
どうしても電子化したい場合は税務署の申請を行なったり、経理関係書類の専用システム導入をしたりする必要がでてきます。またほかの書類も電子化を行なった後でも、紙の書類を原本として残さなければならないものもあります。
いくら保管スペースが減ったとしても、すべての文書を完全に電子化できないことは注意するべき問題でしょう。
セキュリティリスクがある
文書を電子化する際のデメリットとしては、セキュリティリスクがある点です。電子化にはPCを使用しますが、いくらセキュリティが万全なPCでも、いつ悪意のある者によって情報が盗まれるかわかりません。
事例や近年流行しているハッカーの手口などを社内の人間に定期的に共有し、セキュリティ意識を高める努力が必要です。
電子文書に関する法律
電子データのメリットやデメリットを見ていく中で、電子保存法の問題により電子化できないデータがある点について触れましたが、そもそも文書の電子化や電子文書に関して知っておくべき法律には、電子帳簿保存法とe-文書法があります。
電子帳簿保存法とは、会計帳簿や国税関係書類を電子データとして保存することを認める法律です。国税庁が定めたもので、保存可能な書類には、以下のものが挙げられます。
- 現金出納帳や仕訳帳などの帳簿
- 決算書
- 領収書や請求書
一方でe-文書法とは、国税に関係しない文書や帳簿で、保管が義務付けられているものを電子化して保存することを認める法律です。e-文書法は内閣府によって定められているため、電子保存法とは文書管理の方法が異なります。
たとえば電子帳簿保存法が管理する、改ざんがあってはならない国税関係書類などは、タイムスタンプで書類の作成日時を印字することが必要です。タイムスタンプがない電子文書は真実性を確保できないため、法的根拠も担保されません。
またe-文書法に関しても、見読性、完全性、機密性、検索性など文書によって満たすべき要件が決められています。
電子データ化のメリットに惹かれ、電子文書に関する法律を知らないまま電子化を行おうとすると後から大きな問題が発生する可能性があるため、電子化を進める前に電子帳簿保存法とe-文書法についてはしっかりと調べておきましょう。
文書・書類管理に関するよくある質問
文書・書類管理の重要性は?
文書や書類管理を行うことは、作業の効率化と、情報漏洩のリスクを減らすために重要です。管理されないまま乱雑に棚に入れられた書類では、必要な情報を素早く探せません。
また外部に出してしまってはいけない情報を持ち出してしまった場合、情報漏洩へと繋がる可能性もあります。
文書・書類は適切な方法で管理し、誰もがひと目見て分かるようにしておきましょう。
個人文書と共有文書の違いは?
個人文書とは、まだ作成中で他の人に見られないように自分のPCやファイルなどに保管している文書です。一方で共有文書は社内や部署内の自分以外の人でも見られるよう、共有フォルダーなどに保存した文書を指します。
人に見られるか見られないかの違いですが、作成途中の情報を共有フォルダに入れてしまえば、決定版として扱われてしまう場合もあるため、区別はしっかりとつけましょう。
文書・書類管理システムの選ぶポイントは?
文書・管理書類システムは自分だけでなく多くの人が使用するため、誰もが直感的に使いやすいツールであることがポイントです。PC作業が苦手な人でも扱えるツールであるかに注目して選ぶと良いでしょう。
また自社にとって必要な機能と、不必要な機能を洗い出してみてください。様々な機能がついたシステムがありますが、シンプルに欲しい機能だけを盛り込んだシステムを選ぶことも大切です。
まとめ
今回は文書や書類管理の目的や重要性、基本から分類方法まで解説しました。文書や書類管理には様々な方法があり、保存期間なども異なります。
ずさんな管理をしていれば、文書管理本来の目的である作業効率化が行われないだけでなく、情報漏洩などの最悪な形となって取引先からの信頼を失ってしまう場合もあります。この記事を参考に、今一度、文書・書類管理の基本から見直してみてください。
管理に電子化を考えている企業はメリットやデメリットを把握し、適切なシステムを導入して文書・書類管理を行っていきましょう。
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