コラム

電子契約とは?書面契約との違いやサービス比較のポイントを解説

2023.02.01

電子契約とは

電子契約とは従来紙面によってやり取りしていた契約書を電子的に作成し、インターネット等を用いて相手に送付して電子署名してもらい、締結する契約です。
近年デジタル庁の創設や、電子契約に関する法的環境の整備などによりペーパーレス化を推進する中で、政府はデジタル社会に向けて本格的に取り組みを始めました。未だすべてのケースで通用する電子契約の定義は存在せず、実務先行で実施されている部分ではあるものの、近年の新型コロナウイルスの流行にともない電子契約に興味を持つ企業が増えてきています。
電子契約と書面契約の違いや、電子契約の証拠力について見ていきましょう。

電子契約と書面契約の違い

電子契約 書面契約
形式 電子データ(PDF) 紙の書面
証拠力 押印 電子署名 印鑑と印影
本人性の担保 電子証明書 印鑑証明書
完全性の担保 タイムスタンプ 刻印または割印
事務処理 送付 インターネット通信 郵送または持参
保管 サーバー 書棚
印紙 不要 必要

電子契約と書面契約の大きな違いは、紙によってやり取りされているかどうかです。
まず、電子契約をする際は紙でのやり取りは存在せず、インターネット等を介した電子データのやり取りで契約を締結します。
電子契約書に対し書面契約は、紙で作成された契約書に署名や押印を行います。
また事務処理に関しても、電子契約書の送付はオンライン上で行えるのに対し、書面契約での契約書は郵送や持参をして相手に渡さなければいけません。
保管の面を見ても電子契約書はサーバーで保管できるのに対し、書面契約書は書棚などにファイリングする必要があります。
ただし電子契約書では通信トラブルなどで急遽確認が必要な際にできないなどといった事態や、切り替えたばかりでチームが業務に慣れず、ミスを引き起こしてしまう場合も考えられるでしょう。
ミスを防ぐためには、電子契約に切り替えた当初はプリントアウトしたものをファイリングするか、バックアップとして別のPCなどにデータの保管場所を作るなど、工夫するといいでしょう。

電子契約の証拠力

最初に電子契約は明確な定義があるわけではないと述べましたが、電子契約を取り入れていない企業の中には、証拠力について不安に思う方も多いでしょう。
しかし電子契約でも、証拠力はあります。そもそも後述する一部の契約を除き、通常の契約についても契約書は必須ではありません。それでも従来より契約を締結する際に契約書が用いられてきたのは、契約締結後にトラブルが発生しないようにと証拠を残す必要があったためです。
証拠力が認められるには、電子契約が当事者の合意により締結されたものかを明らかにする必要があります。電子署名法第3条によると「契約当事者の電子署名の押印があり、厳格な認証局による電子証明書が付属していれば、真正に契約が成立したものと推定される」と規定されているため、電子署名の押印があり、電子証明書が付属されている電子証明書は、押印された紙での契約書同様の証拠力が認められるでしょう。

電子契約のメリット

電子契約を取り入れるメリットとしては、以下の3つが考えられます。

  • コストの削減
  • 業務効率化
  • コンプライアンスの強化

順番に見ていきましょう。

コストの削減

従来の紙面での契約を電子契約へと切り替えるメリットに、コストの削減があります。
上記の表にも掲載しましたが、紙面での契約書に貼る印紙は、電子契約の場合は必要ありません。
印紙とは契約書や受領書、領収書などの経済的な取引に伴い、作成した書類に課せられる印紙税の手数料を支払うために発行される証票です。
5万円以下の領収額は非課税対象となりますが、以下のように金額によって収入印紙の額が変わります。

領収書の受取金額 収入印紙の金額
5万円以下 非課税
5万円以上から100万円以下 200円
100万円から200万円以下 400円
200万円から300万円以下 600円
300万円から500万円以下 1,000円

 

収入印紙がないだけでも大きなコスト削減となりますが、ほかにも削減できるコストとしては郵送代や封筒代、インク代などが挙げられます。
紙面での契約書の場合、相手に渡す形が郵送であっても持参であっても、なんらかのコストが伴います。
特に持参の場合はガソリン代や電車代だけでなく、距離の遠い企業であれば行き帰りの時間もかかってしまうでしょう。一度の契約にかかるコストは小さくても、積み重ねていけば大きなコストとなってしまいます。電子契約書ではPDFなどの電子データをメールに添付し、相手に送るだけなのでコストを抑えられます。

業務効率化

電子契約へ移行する際、業務効率化のメリットも考えられます。
紙面での契約の場合、多くは契約書の作成から印刷、製本、封入、郵送の流れを踏まなければなりません。契約書を作成して送る側だけでなく、契約書を受け取った相手にも契約書を確認し、押印、返送といった業務が発生します。
電子契約の場合、契約を締結する双方がPCやタブレットを操作して契約を進めていくため、印刷や郵送、返送の作業は必要ありません。電話などで確認しながら契約を進め、押印してもらえれば、その日のうちに契約が締結することも可能です。
万が一の契約書の間違いや変更にも迅速に対応できるだけでなく、今まで書面契約書に時間を取られていた人材を他の業務へとまわし、作業の効率化も図れます。

コンプライアンスの強化

電子契約へ移行することは、コンプライアンスの強化にも役立ちます。
上記表でも示したとおり、書面で作成した契約書の場合、保管場所として使われるのは倉庫やキャビネットなどです。
綿密にファイリング方法を検討したとしても、多くの人が度々取り出すことがあれば、戻す位置の間違いやファイルを紛失してしまう恐れも考えられます。
悪意を持った人物による契約書の改ざんや、災害などにより契約書が復元不可能な状態になってしまう場合も考えられるでしょう。
また、担当者の突然の退職や急病での長期休暇などで、急遽契約を引き継がなければいけなくなった場合、どの状態まで契約が進んだかがわからなくなるリスクもあります。
電子契約書にしてサーバー上で契約書を保管しておけば、上記の紛失や復元不可能な状態へとなるリスクを下げられます。電子署名とタイムスタンプを使えば改ざんも防げます。タスク管理表などで契約の進行状況の確認も容易となるでしょう。
利用する電子契約システムの設定によって更新時期や解約手続きの管理もできるため、コンプライアンスの強化に繋がります。

電子契約の注意点

メリットの多い電子契約ですが、以下のように2点の注意点に気をつけなければいけません。

  • 一部の契約では電子取引を利用できない
  • 取引先の合意が必要

順番に見ていきましょう。

一部の契約では電子契約を利用できない

契約書の中には電子化が認められておらず、書面の契約書で締結をしなければならないものがあります。

  • 滴借地契約借地借家法第22条
  • 定期建物賃貸借契約借地借家法38条1項
  • 投資信託契約の約款投資信託及び投資法人に関する法律5条
  • 不動産売買の重要事項説明書
  • 訪問販売
  • 電話勧誘販売
  • 任意後見契約書

高額な不動産取引や、権利の関係をしっかりと証明しておきたいものについては、未だ電子契約書では対応できないようになっています。ただし、2022年5月に宅建業法が電子化可能となったように、これからも法改正により、多くの書類が電子化できるようになることが予想されます。
電子化は便利ですが、取り入れる際は簡単に判断してはいけません。企業それぞれが自分たちの扱っている商品やサービスについて電子契約できるか否かを今一度確認し、電子化について検討していくことが大切です。

取引先の合意が必要

企業間の取引で電子契約書を導入する場合、相手企業の合意を得る必要があります。
自社で電子契約書に移行する流れが積極的に進んでいたとしても、古くからの体制を変えられない会社や、電子化に拒否反応を示す企業も存在することを理解しておきましょう。
業務でパソコンを利用しないため、未だすべての仕事を手書きで行っている企業もあります。そうなると、すべての取引先で瞬時に電子契約書に切り替えることはできず、企業によって電子契約書を使い分けなければいけません。
電子契約に移行する際は、社内で検討段階の時期などの早い段階で相手に話を持ちかけ、電子契約にした場合に合意してもらえるか確認しておくとよいでしょう。対応できない企業や難色を示す企業に関しては、これまでどおり書面での契約締結を継続することを知らせておくと安心です。
また対応できる企業に関しても、電子契約に切り替えた際の手順などを作成し、相手に知らせておくと親切でしょう。企業によって対応を分けてしまうと、今までと同じ様に紙面の契約書をファイリングして保管する必要があるため、管理の仕方を考えなければいけません。
社内の業務フローの大幅な変更があると、戸惑う従業員もいます。電子契約に切り替える際は、社内教育についても十分に行い、しっかりと準備する必要があるでしょう。

電子契約システムの主な機能

電子契約システムの主な機能は以下のとおりです。

  • 電子押印・署名、送付機能
  • ワークフロー機能
  • タスク管理機能
  • 電子署名とタイムスタンプ機能
  • テンプレートを用いた作成機能

順番に見ていきましょう。

電子押印・署名、送付機能

電子押印・署名、送付機能とは電子契約書が本人によって押印され、改ざんされたものでないことを証明できる機能です。契約書の安全性を高めるために必要な機能で、電子契約システムであれば標準的に搭載されている機能です。

ワークフロー機能

一般的な電子契約システムには、ワークフロー機能がついています。ワークフロー機能とは契約書の情報や業務のやり取りの流れを示したもので、決められた流れに沿って作業を進めれば契約の締結が行える道標となるものです。

タスク管理機能

タスク管理機能とは、チームメンバーそれぞれが行う作業を管理する機能です。
システム画面上にメンバー別のタスクが表示できるため、チーム全体で契約締結までの進捗を把握できます。また、全員のスケジュールを一元管理できるなど、さまざまな機能が備わっているためチームで動く企業にとっては便利な機能といえるでしょう。

電子署名とタイムスタンプ機能

電子署名とタイムスタンプ機能を使用することにより、完全性と真正性の証明ができます。
特にタイムスタンプ機能は取引が行われた日時を証明してくれる重要なもので、改ざんも防げるため、基本的な電子契約システムには自動的に付与されています。
タイムスタンプの有効期限は、使うシステムのプランやサービスによって異なる場合があります。電子契約システムの検討を始める際は、自社の場合に必要なタイムスタンプの有効期限を明確にした上で導入するシステムを選定しましょう。

テンプレートを用いた作成機能

ほかにも電子契約システムには、テンプレートを用いて契約書の作成を補助してくれる機能があります。
この場合の契約書のテンプレートは1種類だけでなく、複数の分野に対応したテンプレートが用意されている場合もあり、さまざまな様式で契約書を作成する必要がある人に嬉しい機能といえるでしょう。法務の知識に不安がある中で、契約書の作成業務が発生した場合などにぴったりのサービスです。

電子契約のよくある質問

電子契約の立会人型と当事者型の違いは?

電子契約は立会人型と当事者型の2種類があり、大きな違いとしては電子署名を付与する人がどの立場の人間であるかです。
立会人型の場合、契約を行わない当事者が指示に基づき電子署名を付与します。一方で当事者型は、契約する本人が電子署名を付与するものです。
当事者側の電子契約を行う際は、認証局と呼ばれる公的機関で厳格な本人確認が行われます。当事者型の方が、立会人型よりも証拠力が高くなることを覚えておきましょう。

電子契約サービスを選ぶポイントは?

電子契約サービスを選ぶ際は、料金やサポート体制、システムの導入実績や使いやすさがポイントです。
電子契約サービスの中には無料期間が設定されているものも多いため、最初は無料で気になるサービスを試してみるのもおすすめです。すでに導入している企業に知り合いがいれば聞いてみたり、レビューサイトなどを利用するのもよいのではないでしょうか。
また、電子帳簿保存法に対応しているかどうかも、導入前に必ず確認しましょう。電子帳簿保存法とは、法人税法や所得税法の帳簿や情報を、電子データ上で保存することを認める法律です。電子帳簿保存法に対応していなければ紙での保存が原則となり、保管の負担や紛失などのリスクも発生します。
電子取引については、2022年1月以降は電子データでの保存が義務付けられているため、電子帳簿保存法の要件を満たさないサービスは法律違反となる可能性もあるため注意しましょう。

電子証明書とタイムスタンプの違いは?

電子証明書とタイムスタンプの違いは、証明の内容です。
電子証明書とは信頼できる第三者が本人であることに間違いがないと証明するもので、タイムスタンプは契約が行われた日時を証明します。特にタイムスタンプがないと悪意を持った者によって改ざんされてしまう恐れもあるため、重要であると覚えておきましょう。

まとめ

電子契約は、政府の進めるペーパーレス化の推進や、近年の新型コロナウイルス流行により、なるべく人と接触しない対応が求められる中で有効な手段といえるでしょう。
コストの削減や業務効率化、コンプライアンスの強化の面でもメリットが多いのもポイントです。
ただし、契約の内容によっては電子契約が使えない場合や、取引先の合意がなければその企業に対し電子契約が締結できないなどの注意点も存在します。
電子契約システムサービスは数多く存在するため、最初にシステムの導入を検討する際は業務に合っているか、どのような機能が必要なのかをしっかりと検討しましょう。
上記のよくある質問を参考に電子契約についての語句の違いを確認し、電子契約システム導入を考えてみてはいかがでしょうか。

サービスについて
詳しく知りたい方はこちら!

社内稟議にもご利用ください

お見積りもこちらから

  • HOME
  • コラム
  • 電子契約とは?書面契約との違いやサービス比較のポイントを解説