コラム

納品書の保管期間は?保管方法や電子化するメリット・デメリットも解説

2023.02.01

納品書の保管期間

納品書の管理方法について、請求書や領収書ほどこまかく管理ルールを定めていないという企業や個人事業主の方もいるかもしれません。

しかし、納品書は法律で保管期間が定められており、期間も法律ごとに異なります。そこでまずは、納品書の保管期間を法律別に解説します。

税法

税法では、納税額の算出に必要とされる証憑書類を7年間保管することが義務づけられています。証憑書類には、請求書や契約書をはじめ、納品書や見積書・送り状など取引履歴を確認できるものの多くが含まれます。7年間としている理由は、税務署が追徴課税できる期間が7年間であるためです。

また、保管期間の7年は「書類の作成日」が起点ではない点に注意しましょう。法人税の場合は「確定申告書申告期限の翌日」が起点です。法人税は、決算日の2カ月後が申告期限となるため、決算日2カ月後の翌日から7年間、その事業年度中に発行された納品書を保管します。

ただし例外として、7年以上保管するケースもあります。具体的には、赤字を繰り越して翌年度の利益から控除する、欠損金の繰越控除が発生した場合です。この場合は、保管期間が7年から10年に変わりますので気をつけましょう。

なお、保管期間内に納品書を紛失・処分してしまった場合は、経費認定されない可能性があります。そして税務調査の際に、保管指定の納品書が正しく保管できていないことが判明すると、追徴課税や滞納税といった附帯税も発生するため注意が必要です。

会社法

会社法も税法と同様に、会計帳簿や見積書・納品書などの証憑書類を保管する義務があります。保管期間は、税法よりも長い10年間です。

10年と長期間保管する理由には、「時効」が関係しています。時効は、取引でトラブルが発生した場合に、さかのぼって法的に対処できる期限のことです。なお、法人間取引の商事時効は5年、法人・個人顧客間取引での時効は10年と決められています。時効の最長期間が10年のため、書類の保管期間も10年とされているのです。

なお、保管の起点となる日は「決算日の翌日」です。仮に決算の締め日が3月31日なら、4月1日から10年間の保管が求められます。また、納品書を発行した日が決算日より前でも、カウントが開始されるのは決算日の翌日です。そのため、納品書によって実際の保管期間に違いが生じる点には注意しましょう。

個人事業主の場合は5年間

税法・会社法に沿った納品書の保管期間は、法人に対するものでした。しかし個人事業主の場合は法人とは異なり、5年間の保管が求められます。なぜなら、個人事業主が納めるのは法人税ではなく「所得税」で、所得税法では証憑書類の保管が5年間と定められているからです。

なお、確定申告が青色・白色かどうかによって保管期間が変わることはありません。また、法人のように赤字を繰り越して保管期間が延長されるルールも存在しません。

ただし、消費税の課税事業者登録している個人事業主は、保管期間が7年となるため気をつけましょう。課税事業者とは、消費税を自ら納税する義務を持つ事業者をいいます。

一般的に課税対象の売上が1,000万円以下の人は、免税事業者です。しかし、インボイス制度の導入に合わせて課税事業者登録を行った場合は、売上金額にかかわらず消費税を納税するため、7年間の保管義務が発生します。

納品書の保管方法

納品書の保管期間と合わせて、保管方法についてもルールがあるのかを解説します。

一般に紙での保管が基本ではあるものの、電子データでの保存も普及が進んでいる状況です。ここでは、それぞれの方法について保管ルールをチェックしておきましょう。

納品書は紙での保存が基本

納品書を含む証憑書類は「紙」で保管するのが一般的です。

たとえば、パソコンなどから印刷した納品書や、郵送で送られてきた納品書が当てはまります。

そして、紙の納品書は保管様式について特に定められていないため、法人ごとに独自ルールを決めて保管しても大丈夫です。ただし、税務調査の際にすぐに指定の納品書を取り出せるようわかりやすくファイリングしておくのがよいでしょう。

ファイリングする際のポイントは以下のとおりです。

  • 取引先別や時期別にファイルや保管場所を分ける
  • ファイルにはラベルや台紙を貼って内容がすぐに理解できる状態にする
  • 専門の資料室を設ける

保管書類が膨大になる際は、貸倉庫や書類の預かりサービスなどを利用する方法もあります。

なお、メールやクラウドサービス上でやり取りをした納品書も印刷して紙で保管することが可能です。しかし、2022年に行われた電子帳簿保存法の改正により、2024年1月1日からは、電子取引による納品書を紙で保存しても無効となるため注意が必要です。そのため、納品書の取引方法によって、保管方法も変わることを知っておきましょう。

電子取引では電子データでの保存が必要

紙の保管と合わせて理解しておきたいのが電子データでの保存です。

デジタル化の発展に合わせて、取引をペーパーレスにする動きが近年は強まっています。

従来どおりの紙保管では、印刷コストや用紙・ファイルなどの備品代もかさみ、ファイリング作業に人件費がかかることで悩む企業も少なくありません。そこで、企業の負担を軽減し、環境にもやさしい保管方法として電子データでの保存が可能となる「電子帳簿保存法」の改正が行われました。

電子帳簿保存法では、オンライン取引やメール取引によるデータを始め、紙で受け取った書類もスキャンして電子保存ができます。特に電子帳簿・電子取引データについては、2年間の猶予期間を終える2024年1月1日から、電子データでの保存が義務化されます。

ただし、可視性や真実性の確保といったこまかな要件を満たす必要があるため、少しずつ準備を整えていく必要があるでしょう。たとえば、電子データの保存要件には以下が挙げられます。

  • すぐに指定の部分を出力できるよう検索性を高める
  • 訂正や削除を行った履歴を残し、改ざんできないようにする
  • 保存場所にマニュアルや操作説明書などを備えつける

紙の取引から電子取引への移行が進んでいる状態なら、早めに電子データ保存が可能な環境を整えておくのがよいでしょう。

納品書を電子データで管理するメリット・デメリット

納品書を電子データで保管するうえで、どのようなメリットやデメリットがあるでしょうか。電子データへの移行は魅力的な部分もある一方で、リスクもあるのです。この項目では、電子データを管理するうえで知っておきたいポイントをおさえておきましょう。

メリット

納品書を電子データで保存するメリットには、以下が挙げられます。

  • 備品費や人件費を削減できる
  • 保管スペースを削減できる
  • 閲覧・承認・押印などの業務フローを簡略化できる
  • 修正や訂正による再発行(再印刷)が不要
  • 自然災害やミスによる紛失を防止できる
  • 持ち出し・盗難による情報漏えいを防止できる

電子化すると、まずコストを大幅に削減できるでしょう。たとえば、書類保管に必要だった備品代や設備費用などが一切不要となります。ミスによる修正や訂正があった場合も、納品書の再印刷が発生しません。

また、紙の場合は出社して保管場所を探す必要がありますが、データならオンラインで書類を参照できるため、保管スペースは不要で出社せずとも確認できます。

業務フローについても、従来どおりの紙ベースだと納品書を探して内容を確認する作業は時間がかかるものです。しかし、データなら日付や取引先・関連用語などで検索でき、すぐに対象のファイルを見つけられて業務の効率化につながります。

セキュリティや紛失リスクについても、物理的な持ち出しを抑制してアクセス制限をかけたり、バックアップによるデータの保護ができたりとメリットが多いでしょう。

デメリット

一方で、納品書を電子データにするデメリットも存在します。

  • サイバー攻撃などによって情報漏えいのリスクが発生する
  • 保管先メディア(USBなど)が持ち出されるリスクがある
  • 紙をデータ化する際に膨大な事務作業が発生する
  • 取引先が電子化していないと不便
  • メモ書きや注意事項を追加できない場合がある

電子データでもっとも気をつけるべき点はセキュリティ面です。電子データは、セキュリティ対策が不十分だと、外部からのサイバー攻撃などによって情報が盗まれてしまうこともあります。また、保管先のメディアがUSBなどだと、紙と同じく盗難のリスクも発生するのです。そのため、セキュリティ対策ソフトの導入や、クラウドを利用したデータ保存・バックアップなどは必須と言えるでしょう。

また、紙の納品書を電子データに変換する場合には、納品書を1枚ずつスキャンしてデータ変換しなくてはなりません。データ化に伴う事務作業は、納品書の数によっては紙保管よりも手間がかかるケースがあるため、注意しましょう。

加えて、取引先との関係も考慮する必要があります。もし納品書を電子データ化できても、取引先が紙での送付を希望している場合は、印刷作業が発生し、かえって手間が増えるかもしれません。

電子データはメリットも多いですが、入念な準備と環境整備が必要だと覚えておきましょう。

納品書の保管期間に関するよくある質問

納品書は何のために必要?

納品書の発行は必須ではありませんが、契約時のトラブル対応時や税務調査の際に根拠資料として役立ちます。納品書には「取引先や発行元情報」「発行した日付」「取引の詳細(数量・金額・税額)」などが記載されており、取引の記録を詳細に残せるのが特徴です。

納品書があれば、取引先から代金を回収できなかったり、経理上の計算と誤差が発生したりした際に、問題を解決できる可能性が高まります。

納品書の電子保存が税務署に承認されるまでの期間は?

税務署への事前承認制度は、2022年1月の法改正で廃止されました。そのため、承認期間を待たずとも電子保存が可能です。

ただし、電子保存を行うには複数の要件があり、事前に環境を整える必要があります。2024年1月までに電子取引や電子データを所定の環境下で電子保存できるよう、早めに準備を進めましょう。

納品書の保管期間に例外はある?

通常の保管期間は、法人で7年間(税法)・10年間(会社法)、個人事業主で5年間です。

ただし、例外として通常よりも長く保管する場合があります。

法人:赤字のある事業年度は10年間の保管が必要

個人事業主:消費税を納税する課税事業者になった場合は、課税売上高の金額にかかわらず7年間の保管が必要

まとめ

納品書の保管期間は、法律によって5年・7年・10年と定められています。しかし、適切に管理をしなければ、トラブルに発展したり、罰則の対象になったりする可能性もあります。

そこで、注目されているのが電子データでの保管です。電子保管はコストの削減はもちろん、さまざまなリスクから大切なデータを守れる点から、保管方法を見直す企業も増えています。

そのため、納品書を安全に保管する手段として、電子データへの変換を検討するのもおすすめです。ただし、電子データへの移行には時間がかかるため、導入を決定したら速やかに環境を整えましょう。

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