書類の保管期間一覧|管理方法や保管期間が過ぎた書類の注意点も紹介
一部の書類には法律で定められた保管期間がある
企業で取り扱う書類には、法律で保管期間が定められているものがあります。これらの書類は、業務やプロジェクト、契約が終了した後も企業で一定の決められた期間保管しておかなければいけません。
保管する期間は、書類によって異なります。もっとも長いものは永久保存、期間の短いものであれば1〜2年ほどです。保管期間が決められている書類の種類は、人事や労務関係の書類、経理・税務関係、総務・庶務関係のものなどさまざまあります。
主に総務に関する書類は2〜5年、経理関係は7年、会社法に関するものは10年ほどになります。法律で定められた保管期間は最低保管期間なので、企業ごとに書類の必要性や安全性などを考慮して、それぞれの文書の保管期間を決めるといいでしょう。
納品書の保管に関しては以下の記事で詳しく解説しています。
「納品書の保管期間は?保管方法や電子化するメリット・デメリットも解説」
保管期間が定められている書類と期間一覧
法律によって保管期間が定められている書類の種類と期間をそれぞれ詳しく見ていきましょう。
永久保存が必要な書類
永久保存が必要な書類には、以下のようなものがあります。
- 定款
- 株主名簿、新株予約権原簿、社債原簿、端株原簿、株券喪失登録簿
- 登記・訴訟に関係する書類
- 官公庁への提出文書、官公署からの許可書・認可書、通達などに関する重要な書類
- 知的所有権に関する関係書類
- 社規・社則、およびこれに関する通達文書
- 効力の永続する契約に関する書類
- 重要な権利や財産に関わる書類
- 関連会社に関する文書
- 会計監査に関する文書
- 社報・社内報、重要刊行物
- 重要統計文書
- 儀式・祭典に関する文書
- 製品の開発・設計に関わる重要な書類(特許書類など)
- 外部団体への加入・脱退に関する書類
これらの総務や庶務で取り扱う書類は、特に法律で保存期間が決められているわけではありません。しかし、企業にとって非常に重要な内容の書類であるため、永久保存が必要とされています。
また人事に関係する永久保存書類は次のようなものがあります。
- 重要な人事に関する書類
- 労働協約に関する書類
- 従業員の労務・人事・給与・社会保険関係の書類
- 表彰や懲戒に関する文書
経理関係の永久保存書類は以下になります。
- 決算に関する書類
- 固定資産に関する書類
- 株式増資に関する書類
- 中長期予算、年次予算に関する書類
30年間の保管が必要な書類
30年間保管が必要な書類は、次のようなものです。
- 労働者に関する作業概要などの定期記録
- 労働者の特定化学物質などを測定する健康診断個人表
- 放射線業務に従事する者の健康診断記録
- 焼却施設等の作業の記録
- 常時焼却施設等のダイオキシン類の濃度の定期測定記録
これらの人事に関する文書は、企業が健全な職場環境を維持しているか、従業員が安全な環境で業務に就いているかを証明するものです。万が一、従業員から労災による損害賠償を請求されるようなことがあった場合、証拠となる書類を提出する必要があります。
場合によっては過去から現在までの長期的な管理体制を知る必要が出てくる場合もあるため、長期保存すべき書類と言えるでしょう。
10年間の保管が必要な書類
10年間の保管が必要な書類は以下になります。
総務関係
- 株主総会議事録、取締役会議事録、監査役会議事録、委員会議事録
- 重要会議の議事録
- 製品の取引に関する記録
- 満期もしくは解約した契約書
- 損害保険に関する重要な文書
- 経営管理のために重要かつ後列となる文書
- 社内全般の通達に関する文書
- 福利厚生に関する重要な文書
経理関係
- 会計帳簿および事業に関する重要書類
- 財務関係書類
- 計算書類および附属明細書
- 月次・年次決算書類
会計帳簿および事業に関する重要書類や計算書類および附属明細書などは、会社法によって保管する起算日も決められています。単に決められた期間で書類を保管するだけではなく、起算日もひと目でわかるようファイリングしておくといいでしょう。
7年間の保管が必要な書類
経理に関する書類は、7年間の保管が必要とされているものが多くあります。
- 仕訳帳、現金出納帳、固定資産台帳などの取引に関する帳簿
- 決算に関して作成された書類
- 領収書、預金通帳、借用書などの現金収受や預貯金の取引で作成された取引証憑書類
- 有価証券受渡計算書、売買報告書、社債申込書などの有価証券の取引で作成された証憑書類
- 請求書、契約書、見積書などの取引証憑書類
- 電子取引に関わる取引情報の電磁記録
- 給与所得者の扶養控除等(異動)申告書、配偶者特別控除申告書、保険料控除申告書
- 給与所得者の住宅借入金等特別控除申告書
- 課税仕入などの税額の控除に関する帳簿、請求書
- 資産の譲渡や課税仕入れ、課税貨物の保税地域からの取引に関する帳簿
- 源泉徴収簿
5年間の保管が必要な書類
5年間の保管が必要な書類は以下の通りです。
人事関係
- 従業員の身元保証書
- 誓約書
- 雇用保険の被保険者に関する書類
- 雇用保険被保険者関係届出事務等処理簿
経理関係
- 監査報告
- 会計監査報告
- 会計参与が備えておくべき計算書類、附属明細書、会計参与報告
- 金融機関等が保存する非課税貯蓄申込書、非課税貯蓄申告書など
- 金融機関等が保存する海外転勤者の財産形成非課税住宅貯蓄継続適用申告書、海外天気者の国内勤務申告書などの写し
- 金融機関等が保存する退職等に関する通知書
- 監査役の監査報告書
- 退職等に関する通知書
- 海外転勤者の財政形成非課税住宅貯蓄継続用申告書、海外転勤者の国内勤務報告書などの写し
総務関係
- 事業報告
- 有価証券届出書・有価証券報告書およびその添付書類、訂正届出書の写し
- 契約期限のある覚書、念書、協定書
- 重要事項のやりとりに関する書類
- カルテ
- 産業廃棄物管理表
3年間の保管が必要な書類
保存期間3年が定められている書類は以下です。
人事関係
- 労働者名簿
- 賃金台帳
- 雇用、解雇、退職に関する書類
- 災害補償に関わる書類
- タイムカードや残業命令書、残業報告書など
- 労災保険に関わる書類
- 労働保険に関わる書類
総務関係
- 半期報告書、半期報告書および訂正報告書の写し
- 官公署関係の認可や出願の書類
- 業務日報、社内会議の記録、契約書など後日参照の可能性がある書類
- 消耗品や購入品の受け入れ・払い戻し・保管の書類
- 統計書類
- 企画・広告・宣伝・市場調査などに関する書類
- 業務日報
- 外部団体への寄付や賛助に関する書類
1〜2年間の保管が必要な書類
1〜2年間の保管義務がある書類は以下の通りです。
人事関係
- 雇用保険関係書類
- 健康保険・厚生年金保険関係書類
- 住所・姓名の変更届
- 出勤簿、休暇届、欠勤願、休暇使用記録表
総務関係
- 臨時報告書、自己株券買付状況報告書および訂正報告書の写し
- 日誌、送受信文書、通知書類、調査書類など
- 来客記録
- 株主総会委任状
- 催事出品商品申請書
<h3>保管の義務がない書類
そのほか、法律で保管の義務が定められていない書類もあります。法律による保管の義務がない書類でも、それぞれ自社での必要性やセキュリティなども考慮して、適した保存期間を決めましょう。
企業全体で一律に保存期間を決められる書類もありますが、部署ごとに決める方が管理しやすいものもあります。ただし、同じ文書なのに部署ごとに保存期間が異なることがないよう、最終的には全社で統一できるルールを作りましょう。
一般的には文書を作成するときに、書類の保存期間や廃棄する時期を決めることが理想ですが、難しい場合もあります。その際は、短期保管するか中長期保管するかを決定して管理するといいでしょう。
文書の管理方法については以下の記事で詳しく紹介しています。
文書・書類管理の重要性と目的は?|管理・分類方法や電子データ化についても解説
保管期間が過ぎた書類は、不要となるので速やかに処分する必要があります。ただし、どの文書にも企業にとっての重要な機密情報や、社員または取引先などに関する個人情報が記載されていることが多いため、書類を廃棄するときには細心の注意を払う必要があります。
重要度の違うさまざまな種類の書類を管理し、保管期間が過ぎた書類を定期的に処分するおすすめの方法はいくつかあります。
簡単に行えるのがエクセルによる管理です。チェックリストを作り、参照条文を確認後にメモしておきながら、条文が改正されたときに更新していきます。書類ごとに廃棄する年数を入力しておけば、ソートをかけてその年に処分する書類をリストアップできます。
またペーパーレス化を推進する企業なら、書類を順次スキャンして保管する方法もおすすめです。電子帳簿保存法により、2024年1月1日からは国税に関する決算書や請求書、納品書などの重要書類も電子化での保管が完全義務化されるため、今後保管する書類からでも電子化していくといいでしょう。
ただし、一部の書類は、紙で保存しなければいけないと定められているため注意が必要です。
ここからは、書類を処分するときに特に注意が必要な点について詳しく解説します。
機密情報などが流出しないよう注意が必要
個人情報や機密情報が記載されている書類は、外部に情報が漏洩しないようシュレッダーや溶解などの方法で速やかに廃棄しましょう。電子化したデータの場合は、第三者が閲覧やコピーできないよう適切に削除してください。
シュレッダーによる廃棄方法は手軽に書類を廃棄できますが、処分する書類が多いと時間と人件費がかかります。また裁断されたものが大きすぎる場合は、復元されるリスクがあります。
溶解は、文書廃棄を請け負う専門業者に依頼して書類を溶かして処分してもらう方法です。企業側での手間がかからないうえ、完全に溶かして復元できないようにするため、セキュリティが高い方法として近年多く利用されています。
ただし、文書を業者に預けてしまうと処理のプロセスが見えないため、信頼できる業者選びが重要になってきます。
マイナンバーが記載された書類は速やかな処分を
従業員に関する扶養控除等申告書や、雇用保険被保険者資格取得届などの書類にはマイナンバーが記載されています。マイナンバーが入力された書類は、内閣府により保管期間が経過した後は速やかに廃棄しなくてはならないと定められています。
保管期間終了後、マイナンバー入りの書類を廃棄するまでの時期は企業に一任されているため、年末調整や年度末など業務の効率と安全性を考えて廃棄するタイミングを決めておきましょう。ただし従業員との契約関係が終了しても法律で保管が義務付けられている文書は一定期間保存する必要があり、マイナンバーの削除もできません。
書類保管期間に関するよくある質問
書類の保管期間の開始日は作成日?
書類の保管期間の開始日は、作成日のものだけではなく、最後に記入した日や契約が終了した日など書類によって異なります。
例えば、10年の保管期間が定められている計算書類および附属明細書は、作成日が開始日になりますが、会計帳簿および事業に関する重要書類は記帳閉鎖の日が開始日です。また監査報告や会計監査報告、事業報告などは、株主総会の1週間前の日(取締役会設置会社の場合は2週間前の日)が起算日となります。
労災保険や雇用保険、健康保険、厚生年金保険などは、完結の日が起算日とされています。
書類の保管方法は定められている?
書類の保管方法は、種類によって定められているものがありますが、請求書や見積書、契約書、納品書、領収書などは、紙で保存してもスキャンしてデータとして保存しても問題ありません。ペーパーレス化を進めるなら、データ保存に切り替えていくといいでしょう。
請求書や契約書は電子データで保管してもOK?
経理関係の帳簿書類は、原則紙で保存する必要があります。パソコンで作成したデータなども印刷して保存します。ただし保存期間の6年目以降になると、一定の基準を満たしているマイクロフィルムリーダや、マイクロフィルムリーダプリントなどを用いたマイクロフィルムによる保存が可能になります。
そして帳簿書類も一定の要件を満たせば、電子データで保存が可能になります。電子帳簿保存法改正により、帳簿書類のデジタル化が容易になったため、2024年1月1日に先駆けて電子データでの保存に切り替えていくのもおすすめです。
まとめ
企業で取り扱うさまざまな書類は、法律で保管期間が定められているものがあります。長いものは永久保存、他には30年や10年など中長期保存が必要なものや1〜2年で廃棄できる書類もあります。
企業にとって重要な情報が記されている書類は、中長期の保管が義務付けられていますが、比較的短期間の保管で良い書類も保管期間内は自社でしっかり管理する必要があります。
文書を電子化して保管する場合も、IDやパスワードを設定したりアクセスに制限をかけたりして、十分なセキュリティ対策を行ってください。
また、保管期間が過ぎた書類は速やかに廃棄しなければいけません。社内の保管スペースが膨大になってしまうだけではなく、機密情報やマイナンバーが記載された書類が外部に漏洩するリスクが高まる前に、適切な方法で処分しましょう。
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