ISOと文書管理の関係性は?ISOに基づいた文書管理のメリットや重要性も解説
文書管理とは
文書管理とは、社内で使用する書類の管理を意味します。
例として社内で使用される書類には、以下が挙げられるでしょう。
- 取引先リスト
- 契約書
- 納品書
- 会計帳簿
これらを作成し、活用・保管したのちに適切に破棄する一連の業務が「文書管理」です。
必要な情報をすぐに使えるよう文字配置や書式を統一してまとめたり、決まった場所へ保管して活用する人が探しやすいように整えたりするのも文書管理に当てはまります。文書管理によって社内の業務効率化や、重要な情報の保護もできるため、適切な企業経営には欠かせません。
ISOとは
ISO(International Organization for Standardization)とは、国際取引を円滑にするための標準規格です。
ISOを取得するには国際機関による審査があり、承認されると「ISO認証取得」状態となります。ISOには「9001」「14001」などの番号で区分けされている複数のタイプがあり、以下が代表例です。
- ISO9000シリーズ
ISO9001が主要で、品質保証を示す国際規格。取得すると、製品の品質が高いことや、品質向上のための取り組みを継続していることが証明される。
- ISO14000シリーズ
ISO14001が代表例で、環境保全に関する国際規格。仕入れ・製造・循環の過程において、環境を意識した活動を行っていると証明できる。
ISOを取得・更新している企業は、国際的に見ても品質や管理状況が優れていることを証明できるため、ISOを取得する企業は国内でも増加傾向にあります。
ISOにおける文書管理とは
ISOの中で主要な「ISO9001」を取得するにあたっては、適切な文書管理を行うことが欠かせません。
日本では2000年以降、ISO取得において「文書作成」に重点を置いた対策が進められてきました。しかし品質管理において大切なのは、ただ文章を作成するだけでなく、適切な品質管理のためにマニュアルなどを文書化し、しっかりと活用・保管することです。そのためには、必要なマニュアルがきちんと整備されていることや、社内文書が正しく管理されている環境を整えることが求められます。
ISO取得での文書管理要件について、以下で詳しく解説します。
ISOの文書管理に関する要求事項
ISO9001(9001:2015年の場合)で求められる文書管理の要求事項をまとめると、以下のとおりです。
- 作成した文書が必要なときや場面で、すぐに入手・閲覧・活用できる状態であること
- 文書の情報について機密性が守られ、保護されていること
- 文書へのアクセスや検索がしやすいこと
- 文書を変更した場合は履歴を残し、修正なども行える状態にしておくこと
- 適切に保管・廃棄すること
参考:日本規格協会「ISO9001:2015 品質マネジメントシステム要求事項」
要求事項を見ると、文書を必要とする人がいつでも適切な状態で利用できる環境にしておくのが大切だとわかります。また、機密性や検索性などにも配慮する必要があり、細部にまで気を配る管理能力が求められるでしょう。
文書管理の重要性
そもそも文書管理は、なぜISOにおいて重要視されているのでしょうか。
この項目では文書管理の重要性を解説します。
保管場所の最適化・重要書類の紛失防止
文書を保存する際には、紙・電子データを問わず管理コストが発生します。重要な書類がどこにあるのかわからない状態を避けるために、紙であれば資料格納スペースを準備してラベルを貼り、ファイリングしながら保管するでしょう。データならツールを使ってパソコンやクラウド上に、フォルダ分けをしながら保存します。
しかし、いずれも適切に管理しておかないと、紛失や消失・情報漏えいのリスクがあり、大きなトラブルを招く要因になりかねません。
たとえば、不要になった文書を廃棄しなかったために、情報の異なる文書が同じ場所に置かれ、間違った情報が社内に拡散されるかもしれません。あるいは、自然災害によって資料室に保管された文書のすべてを失ってしまう可能性もあるでしょう。
そこで文書管理を行い、あらゆるリスクから企業を守る必要があるのです。
業務の効率化
業務を効率化することも文書管理の目的です。
文書管理ができていない場合、社内の業務に多大な支障をきたします。具体例としては、以下のようなトラブルが考えられるでしょう。
- 閲覧したい文書が見つからず、探すために社員が残業する
- 保管文書があまりにも多く、社内の業務スペースを圧迫している
- 同名で複数の文書が保管されており、正しいと思って利用した文書の情報が古く、取引先に迷惑をかけた
社内外での業務をかえって複雑にしたり、ミスを誘発しやすくなったりと文書管理のない状態では企業活動も万全にできません。そのため、企業全体で文書管理を行い、社員の業務を効率化していく取り組みが大切です。
法律遵守
文書管理は、法律を遵守することにもつながります。
そもそも社内で保管する文書には、法律で保管方法が定められているものが多くあります。
たとえば、納品書や注文書などの取引記録や決算書類などです。税務に関するものであれば、税務署が中身を確認したい場合にすぐに取り出せる状態にしておかなくてはなりません。そのほか人事書類や監査報告書など、あらゆる社内文書が保管義務の対象となっています。
もし適切に管理されていない状態だった場合は法律違反となり、企業としての存続能力や信用も問われるでしょう。
法律をきちんと守って健全な企業活動を行うためにも、文書管理は必須といえるのです。
ISOに基づいた文書管理を行うメリット
ISO9001を取得して文書管理を行うと、社内外を問わず多くのメリットが得られます。ここでは、代表的なメリットを3つ紹介します。
社外からの信頼性向上
ISOに沿った文書管理を行うと、自社の製品やサービスが高品質であることを国内外へ向けて証明できるでしょう。「品質が高い製品を提供できている=優良企業」として、取引先や顧客に高く評価されたり、競合他社とも差別化できたりして、優位な状況に立てます。
また、「品質が低い」といったクレームも軽減し、顧客や世間に対してクリーンな印象を与えられるかもしれません。BtoBの場面では、ISO9001の認証取得を条件に取引を行うとしている企業もあるため、事業拡大や業務提携の機会が増える可能性も見込めます。
信頼性を向上でき、ビジネスチャンスも広がる点は、ISO取得および文書管理の大きなメリットといえるでしょう。
顧客満足度の向上
ISOの要求事項を守る文書管理では、業務の効率化や改善が可能なため、結果として顧客満足度の向上にもつながります。
たとえば、多大な時間がかかっていた顧客対応の業務フローも、文書を適切に管理することで大幅に時間を短縮できる可能性があります。状況に応じたマニュアルを完備しておけば、顧客ごとに適切な対応を選択でき、満足度をさらにアップさせることが可能です。
ただし、顧客満足度はISOを取得したからすぐに向上する訳ではありません。ISO取得後も変わらずに、文書管理や製品品質の管理を継続することで、顧客満足度は向上・維持できます。顧客からの厚い信頼を保つためにも、文書管理を含む業務効率化を推進していく必要があるでしょう。
属人化解消・生産性向上につながる
適切な文書管理によって、属人化の解消も期待できます。
企業にとって社員は大切な資産であるため、優秀な個人の能力を広く共有していく姿勢が大切です。そこで社員の持つスキルやノウハウを文書化し、誰が読んでも理解できるマニュアルとして共有できれば、新入社員の入社や急な退職などが発生してもこれまでと同様に業務ができます。また、スキルの共有によって組織全体での生産性も向上するでしょう。
反対に、アップデートされた新しい技術や社内ルールを正確に理解し、既存の社員へ広く浸透させることにも役立ちます。
一部の人だけが理解できる状態を防ぎ、個々のスキルを平等に高めていける環境づくりは、適切な文書管理があってこそだとも考えられるでしょう。
ISOの文書管理に関するよくある質問
ISOとは?
ISOは、国際取引を円滑にするための世界共通の標準規格です。ISO取得には審査があり、承認されると品質管理や環境保全などの面で高い水準があることを国内外へ向けて証明できます。
また、ISO認証取得によるメリットは、信頼性や顧客満足度の向上、業務効率化などさまざまです。
ISO規格の種類は?
ISOは5万種類以上あるといわれています。中でも「9000」「14000」シリーズは特に多く普及しており、日本でも取得事例が増えている状態です。
- 9000シリーズ
品質マネジメントに関する規格で、品質や文書管理の仕組みを規定している。9001が主要。 - 14000シリーズ
環境マネジメントに関する規格で、14001が代表的。環境保全を意識した仕組みを規定している。
文書管理システムを導入するメリットは?
文書管理システムを導入することで、業務の効率化や改善が期待できます。文書にタグやメモを設定して関連用語で検索できるようにしたり、機密性の高い文書へのアクセスを制限することが可能です。
重要な社内文書を適切かつ安全に活用・保管できるため、コストをかけてでも文書管理システムを導入する企業が増えています。
まとめ
ISOにおける文書管理の要求事項を遵守すれば、円滑な文書管理が実現します。また、ISO認証取得によって得られるメリットは多く、たとえば企業の成長や信頼性の向上、属人化の解消にも役立つでしょう。
ただし、適切な文書管理のためには、文書作成のみならず保管・廃棄など全体を通しての見直しが求められます。そのため、必要に応じて専用システムを導入し、新たなノウハウを構築していくのもよいでしょう。
業務が複雑化し、生産性が低下しているなら、改めて文書管理について考えてみてはいかがでしょうか。ISO取得を目指せば、社内文書も適切に運用できます。
サービスについて
詳しく知りたい方はこちら!
社内稟議にもご利用ください
お見積りもこちらから