コラム

ペーパーレス化とは?推進の必要性や現状の課題・成功事例を解説

2023.02.01

ペーパーレス化とは?必要性と現状の課題

ペーパーレス化とは、紙媒体の情報や資料を電子化して使用したり保管したりすることを言います。業務で閲覧したい情報は、書類ではなくエクセルやワードなどのアプリケーションに入力して保存、またはスキャンしてパソコン上や社内の共有ドライブ、クラウドのストレージに保管します。

ペーパーレス化は企業が導入している他にも、電子書籍や電子チケットなどさまざまな分野で普及しています。

ペーパーレス化の必要性

ペーパーレス化は、日本政府が推進している取り組みでもあります。ペーパーレスにすることで、使用する紙を減らしコストを削減できます。また書類を保管するスペースが必要なくなるため、オフィスを省スペース化でき効率的に業務を行えるようになります。

重要な書類の管理がしやすくなり、セキュリティ強化にも役立ちます。さらにコロナ禍における新しい働き方、テレワークを導入する企業にとっても業務を円滑に進めるためにペーパーレス化は必須といえます。

現状の課題

ペーパーレス化は、テレワークの普及や近年政府が推進しているDX(デジタルトランスフォーメーション)の影響により、注目が高まっている取り組みです。
しかし、一般社団法人日本能率協会が2021年に行った調査によると、全体の4割以上がペーパーレス化することで業務の生産性が向上すると考えているにも関わらず、半数以上の企業がこの1年で「進んでいない」と答えています。

また全体の6割以上が、ペーパーレス化の導入にあたり、ITスキルやセキュリティに対する不安を持っていることもわかりました。電子化されていないものは印鑑やFAXとの回答が6割以上、さらに契約書は企業の5割近くがいまだに紙でのやり取りをしています。

参考:2021 年「ビジネスパーソン 1000 人調査」【ペーパーレス化の実施状況】

ペーパーレス化のメリット

ペーパーレス化はコストを削減し、生産性を上げられるなど、さまざまなメリットがあります。ひとつずつ詳しく見ていきましょう。

業務効率化が図れる

ペーパーレス化を行い、電子化した文書をクラウド上のストレージに保存すると、複数人で情報の共有ができるようになります。それぞれが必要な情報やデータを自由に閲覧できるため、業務を円滑に進めやすくなります。また電子文書は、ファイル名ですぐに検索できる点もメリットです。

文書の作成や申請書や稟議書の承認、回覧なども書類を印刷せず行えます。業務の効率化が図れて生産性も向上するでしょう。

コスト削減

ペーパーレス化するとコストを削減できます。書類を作成するときの印刷用紙やトナーの使用が大幅に減ります。また必要なプリンターの台数も減らせるため、リース代やメンテナンス費用も抑えられるでしょう。

書類を使ったやり取りの場合、別途郵送代や配送料が必要になることがありますが、電子文書なら輸送費のコストもかかりません。また書類を仕分けするためのファイルボックスや、バインダーなどの備品も必要ないのでそれらのコストも削減できます。

社内スペースの有効活用

電子文書はクラウドストレージやハードディスクに保存するため、業務に関する膨大な書類を保管する場所を確保する必要がなくなります。倉庫や大型キャビネットが不要になり、オフィスのスペースも有効活用できるようになります。

社員のデスク周りの書類がなくなり、部署ごとの文書保管スペースも不要になるため、スマートなオフィス環境を作れるでしょう。

セキュリティの強化

電子文書化することでセキュリティを強化できます。紙の文書の場合、誰でも簡単に閲覧・コピーができるため情報漏洩のリスクがあります。しかし電子文書には、IDやパスワードを設定できるので、管理がしやすくなります。

担当部署や限定した社員だけでID・パスワードを管理できれば、紛失の心配もなくセキュリティを強化できるでしょう。また紙の経年劣化による書類の作り直しなどの無駄な業務も減らせます。

ペーパーレス化のデメリット

ペーパーレス化には、デメリットもあります。ペーパーレス化が進んでいない理由には、企業がこれらのデメリットを考えてペーパーレス化の導入に踏み切れない点も挙げられるでしょう。

ITリテラシーが求められる

ペーパーレス化して業務で電子文書を使用する場合、社員のITリテラシーも求められます。電子文書に変えても社員が使いこなせないのでは、業務に支障が出る可能性もあります。

ペーパーレス化を導入する際は、社員全員が理解し使いやすいツールの導入を検討する、社員のITリテラシーを高めるために電子文書の取り扱いについての教育や研修を実施する、などの工夫が必要になります。

書類の閲覧性が低下する

書類を電子化することでかえって使いにくさが出てしまうことがあります。例えば電子文書の場合は、直接メモを書き込むことができません。また複数のページを並べて比較したいのに、ディスプレイの画面サイズや枚数によってすべてを1つの画面で見比べることができない場合があります。

業務によっては紙面で取り扱った方が便利な場合もあるため、結局電子文書化したものを印刷して使うことになり、手間がかかってしまう可能性があります。

システムの導入コストがかかる

ペーパーレス化するには初期費用がかかります。従来の紙の文書をすべてデータ化する場合、膨大なマンパワーと時間がかかるでしょう。外部に委託する方法もありますが、その場合も発注コストがかかります。

また社内のシステムを電子文書を保管するために十分なハードディスクに変えたり、電子文書を使いやすいディスプレイやデバイスを揃えたりと、システムを整備するためのコストも必要です。

システム不具合の影響を受ける

ペーパーレス化を行うと、システムの不具合や故障が起きた場合に、業務に支障が出てしまいます。システム復旧までの間、すべての業務を中断せざるをえなくなったり、頻繁にバックアップを取っていない場合は、データの一部を消失してしまう可能性もあります。

ペーパーレス化した場合は、システムに万が一のトラブルがあってもデータが失われないよう、常にバックアップを取って備える必要があります。

ペーパーレス化ができる書類を把握しよう

ペーパーレス化は、社内すべての書類を電子化できるわけではありません。ペーパーレスにできるものとできないものがあります。ペーパーレス化を導入しても紙の書類で残す必要があるものもあるため、電子化できる書類とできない書類を把握しておかなければいけません。

ペーパーレス化の対象になる書類

ペーパーレス化の対象になる書類は、会議の資料、ビジネス文書、パンフレットやカタログなどがあります。会議資料はオンラインミーティングが増えているため、電子化し画面共有して使うシーンも増えています。すぐにペーパーレス化できる書類です。

また帳簿や請求書、領収書、契約書や稟議書、損益計算書、監査報告書などのビジネス文書は、電子帳簿保存法やe-文書法の要件を満たせば電子化した文書を正式書類として保管できます。

パンフレットやチラシ、カタログ類も電子化すれば、商談やプレゼンのときもノートパソコンやタブレット1台で対応でき、情報のアップデートも簡単に行えます。

ペーパーレス化の対象にならない書類

法律でペーパーレス化できない書類が決められています。e-文書法では免許証・許可証などの現物性が高い文書、船舶に備える手引書など緊急時や非常事態のときに即座に閲覧する必要がある書類は、紙の書類で保管することを義務付けています。

ペーパーレス化を進めるうえで、これらに該当する書類は電子化できないので注意しましょう。e-文書法の要件を満たしていない電子文書は、正式な書類として認められません。

ペーパーレス化を推進するためのポイント

ペーパーレス化をスムーズに進めるためのポイントをお伝えします。ペーパーレスに必要なシステムの整備や人的要員の確保だけではなく、社員がペーパーレス化に順応できるようなサポートや導入の進め方などのフォローも大切です。

社内でペーパーレス化に対する理解を深める

社内でペーパーレス化が必要な理由を明確に伝えるようにしましょう。経営層だけがペーパーレス化に積極的に取り組んでも、社員の理解が得られなければペーパーレス化を導入しても業務の効率化や生産性の向上には結びつきません。

また、システムや総務など担当部署だけがペーパーレス化を希望しても、経営層が受け入れてくれなければ実現は難しいでしょう。

なぜペーパーレス化が必要か、具体的にどのようなメリットとデメリットがあるのかを整理して、理解が得られるよう十分な説明を行ってください。

優先度の高い部分から段階的にペーパーレス化を進める

ペーパーレス化が決定しても、すべての文書を一度に電子化するのはよくありません。今までとはまったく違うオペレーションに変えてしまうと、混乱を招いたりシステムの不具合が起きたりして業務に支障をきたす場合があります。

まずは、優先度の高いビジネス文書や会議資料など部分的にペーパーレス化を進め、少しずつ対象範囲を広げていきましょう。段階的に導入することで、現場の社員も対応しやすくなり、ペーパーレス化の問題点や課題点を修正・改善しながら進めていけます。

ペーパーレス化推進における成功事例


ペーパーレス化が成功した事例を、「10のワークプレイス改革の取組」の中から紹介します。

参考:10のワークプレイス改革の取組(総務省)

ペーパーストックレスの導入により効率的なワークスタイルを実現:コニカミノルタビジネスソリューションズ株式会社

コニカミノルタビジネスソリューションズ株式会社では、 オフィスのハード面を改革し新しいワークスタイルを生み出すために、文書を紙媒体で保存しないペーパーストックレスや、固定席を決めないで業務を行うフリーアドレスを導入しています。

電子データで保存できる文書をすべてデータ化し、ファイルキャビネット約56台分の省スペースに成功しました。ゆとりができたオフィススペースは、フリーアドレスや会議室、ミーティングスペースなどに活用しています。

フリーアドレスにすることで、固定の席数も減らせます。コニカミノルタビジネスソリューションズ株式会社は、約40名の社員に対して24席だけを設置し、座席が足りない場合は窓際などに設置されたフリースペースや協議スペースで業務を行います。

これらの取り組みの結果、オフィスのスペースを有効に活用でき、社員同士のコミュニケーションが活性化してアイデアが創出されるようになりました。

ICTを活用したペーパーレス会議の実現:長野県長野市

長野県長野市では、会議資料の準備の膨大な手間とコストを削減するためICTを活用しました。ICTは情報通信技術のことです。一部の会議で紙の会議資料の配付をやめて、発言者のパソコンの画面と同じ画面を、各出席者の席に設置したパソコンの画面に表示させるようにしました。

これによりペーパーレスの会議が実現し、大幅な業務の効率化を図れています。また長野市では会議の他にも部署ごとに配置していたプリンタ、コピー機、FAXなどを集中管理する複合機に入れ替えることで、約1,000台の機器を250台に減らすことに成功しています。

さらに紙文書の電子化も推進していて、紙文書を削減し保管するスペースを大幅に削減することも目指しています。

ペーパーレス化についてよくある質問

電子帳簿保存法とは?

電子帳簿保存法はデジタル社会やペーパーレス化に向け1998年に施行された法律です。2022年1月からは要件が緩和された改正版の電子帳簿保存法が施行されています。

電子帳簿保存法では、法改正国税関係の帳簿書類を電子データで保存する際の要件や、電子でやり取りした取引の情報の保存方法などについて定めています。電子帳簿保存法にある一定の要件を満たせば、電子データを正式な書類として保管できます。

ペーパーレス化とDXの関係性は?

ペーパーレス化は、DX(デジタルトランスフォーメーション)の推進する取り組みの1つと言えます。紙文書を電子化するだけではなく、ITシステムやツールを使って分析したり、組織や業務、企業文化やビジネスモデルをデジタル化することで時代の流れに沿った変革ができるでしょう。

ペーパーレス化に役立つツール・システムは?

Web会議システムを利用すれば、画面を共有して資料を表示したり、モニターやプロジェクターに映したりできるので、紙の資料を用意する必要がありません。また、インターネット上でデータを保存・共有できるオンラインストレージもペーパーレス化に役立つでしょう。
OCRツールを利用すれば、カメラやスキャナーなどは不要で、読み取ったものは画像ではなくテキストデータとして変換してくれます。

まとめ

多くの企業でペーパーレス化に対する関心は高く、既に取り組みを進めているところも多いです。しかし一方でペーパーレス化のデメリットがネックになり、なかなか実現していない企業も少なくありません。

ペーパーレス化を推進するためには、全社員がペーパーレス化の必要性やメリット・デメリットを理解し一緒に取り組む必要があります。十分な検討と協議を重ね、段階的にペーパーレス化を導入していきましょう。

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