電子印鑑(デジタルハンコ)とは?メリット・デメリットや作り方を解説
電子印鑑(デジタルハンコ)とは
電子印鑑(デジタルハンコ)とは、紙面上ではなく電子文書に対して捺印が可能な印鑑の総称です。たとえば、WordやExcelなどのファイル上や、PDF化したデータや画像などに捺印できます。
電子印鑑は、業務効率化にもつながるとして近年話題になっており、書類の承認フローに導入する企業も増えています。
電子印鑑が普及している背景
パソコンやスマートフォンの普及によって、デジタル上のやり取りだけで完結できる業務も増え、リモートワーク環境で働くことが一般的になってきました。また、働き方の見直しや環境を配慮した暮らしなども推進され、従来の仕組みや業務をDX化(デジタル技術を活用して変革すること)する動きも活発になったと言えます。
そのような環境で注目されているのが、書類のペーパーレス化です。
これまでは印刷した書類に直接捺印し、対面や郵送などで提出するのが一般的な流れでしたが、現在の職場・生活環境には適さないケースも出てきました。そこで、書類や印鑑をデジタル化し、オンライン上ですべてのやり取りができる環境を作り、いつでも・どこでも対応できるように電子印鑑の普及が進んでいます。
電子印鑑に法的効力はある?
電子印鑑と実印の効力に違いはありません。そのため、通常の印鑑と同じように、日常で使う請求書や納品書・領収書など幅広い書類に使用できます。
前提として、捺印そのものには法的効力がなく、電子であろうと実印であろうと機能は同等です。また捺印は、同意や確認事項のある重要な書類に対して、相手方の意思があるかどうかを確認するためのものであり、必須ではありません。
ただし一般的には、印鑑で捺印すると契約が成立したり、重要な商談などで使用するため、強い効力があると考える方が多いでしょう。しかし、実際には法的効力をそこまで考える必要はなく、ほとんどの書類に対して電子印鑑を使用できます。
電子印鑑のメリット
電子印鑑を利用すると、どのようなメリットがあるのでしょうか。代表的な2つのメリットを解説します。
承認フローなどの業務効率化
電子印鑑によって、従来の承認フローの多くを削減できます。たとえば、従来の流れで必要だった以下の業務を減らせるでしょう。
- 書類の印刷
- 印鑑や朱肉の用意や補充
- 書類承認のための出社
- 書類に不備があった際の再印刷や再捺印
- 対面や郵送による捺印後の書類提出
社内の書類に電子印鑑の使用を認めれば、書類の作成から提出のすべてをオンラインで完結できます。また、承認に関わる人材が出社する必要もないため、リモートワークや外出先など、場所や時間にも縛られない効率的な業務が可能です。
ペーパーレス化によるコスト削減
電子印鑑を採用すれば紙の印刷が一切不要となるため、コストの削減につながります。印刷にかかっていたコピー代やインク代に加え、用紙や書類の保管費用・スペースも不要です。
さらにSDGsの観点でも、ペーパーレスに積極的に取り組む企業姿勢は地球環境に配慮しているとアピールでき、ステークホルダーからの好感度を高めることにもつながるでしょう。
電子印鑑のデメリット
一方で、電子印鑑にもデメリットがあります。電子印鑑を導入する前に、注意点も把握しておきましょう。
簡単に複製できてしまう
電子印鑑はいつでも簡単に作成できるため、複製される可能性があります。また、捺印は対面でなくとも成立するため、第三者が不正に使用したり、なりすましの被害に合う可能性が考えられるでしょう。
印鑑が複製され、不正利用された場合は、企業への信頼度やイメージが悪化するリスクがあり、その後の企業活動にも大きな影響を与えるかもしれません。
電子印鑑の作成には無料・有料にかかわらず、さまざまな作成ソフトがあります。どちらにもメリットはあるものの、重要な場面で使用する業務用の電子印鑑であれば、複製できないものやセキュリティ対策が施されたものを採用するなど工夫が必要です。
取引先企業の理解が必要
電子印鑑を採用する企業はまだ多くありません。そのため、従来通り紙の書類による捺印が行われている企業にとって、電子上で書面のやり取りをするのは慣れない業務であり、混乱を招く要因にもなるでしょう。社内のマニュアルや、電子印鑑に対応できるデバイス環境が準備できていない状況も想定されます。
相手方の理解度によっては「電子印鑑は怪しい」「信頼できない」と、かえって自社との関係性を悪化させてしまう可能性があります。そのため、理解・準備がある取引先なのかどうかをよく確認してから、導入を進めていくことが大切です。
電子印鑑の作り方
特殊なツールがなくても、電子印鑑はすぐに作成できます。ここからは、電子印鑑の作成方法を4つ紹介します。
Word・Excel・PowerPointで電子印鑑を無料で作成する方法
もっとも手軽な方法は、WordやExcel・PowerPointなど、多くのパソコンに標準で入っているOfficeのソフトを利用するものです。Officeソフトでは、文書や図表内に自作した印鑑画像を挿入できます。
たとえば、赤い枠を図形ツールで描いて、その中に印鑑のフォントで名字や社名などの文字を入れて画像保存すれば、いつでも使いまわしができる電子印鑑が完成します。画像サイズを変えて必要な部分に貼り付けして使用できます。
手持ちの印鑑の印影をスキャンして電子印鑑を無料で作成する方法
紙に実印を捺印して、それをスキャン・加工することで電子印鑑を作成する方法もあります。
使用したい印鑑の印影をスキャナーで取り込み、明るさやサイズなどを調整すれば、リアルなデザインの電子印鑑ができるでしょう。本物の印鑑をもとに作成しているため、WordやExcelなどで作成した印鑑よりも、信ぴょう性の高さを印象づけられます。
無料ツールを活用して作成する方法
電子印鑑を作成できる専門の無料ツールを使用してもよいでしょう。
たとえば、複数の印鑑フレームがテンプレートとして用意されており、好きなデザインとフォントを選ぶだけで、オリジナルの電子印鑑が作成できるタイプもあります。あるいは、二つ目の手法で紹介した印影のスキャンと加工を同時に行う機能が備わったものも人気です。
無料ツールであれば、用途に応じてさまざまなタイプの電子印鑑を数分で作成でき、大幅にコストを削減できます。
有料サービスを利用して電子印鑑を作成する方法
電子印鑑のデメリットの章でご紹介した、セキュリティ対策について不安がある場合は、有料ツールを導入しましょう。有料ツールは、無料ツールと同様に簡単に印鑑作成ができる一方で、複製できない機能を付与したものや、使用履歴が残るものなど付加価値がついているツールが一般的です。
複製できないタイプの印鑑は、作成した電子印鑑にシリアルナンバーが付与されて、ひとつひとつが違うものだと証明できます。使用履歴が残るタイプは、「だれが」「いつ」「何に」印鑑を押したのかについて、記録され不正利用を防げるのです。
ツールによっては、電子取引のすべての業務を代行してくれる機能が付随したタイプもあり、大幅な業務効率化が見込める可能性があるでしょう。
作成方法別の電子印鑑の特徴
電子印鑑は、無料ツールでも有料ツールでも同じように作成できます。
いずれも採用する利点があるため、どちらを採用するか悩む場合もあるでしょう。そこで、使用時にどのような特徴があるのか、作成方法別に解説します。
無料で作成した電子印鑑の特徴
Officeソフトや無料の専用ツールは、その場ですぐに印鑑を作成・利用できる点が魅力です。押印が必要ないと思っていた書類に押印欄があった場合や、社内書類の閲覧確認などで急にサインが必要になったときにも役立ちます。
一方で、誰もが同じデザインとなるため、本人である証明がしにくい難点があります。仮に、社内で同じ名字の人が同じ電子印鑑を使用していた場合には、どちらの捺印なのかが判別しにくくなり、トラブルの原因にもなる可能性があります。
また、印影のスキャンを使って作成する場合は、画像データが外に流出して、複製される危険もあるでしょう。
印影が鮮明であれば、そのデザインを使って本物の印鑑も発注できてしまいます。そのため、印影を使うのは認印・角印程度にとどめておき、複製されるとリスクが高い銀行印や実印などは電子印鑑に変換することを控えましょう。
有料サービスで作成した電子印鑑の特徴
有料サービスで作成した電子印鑑は、本人証明ができたり、複製できない機能がついていたりと、セキュリティ面でのメリットが多い点が特徴です。たとえば、使用者の本人認証をしたうえで電子印鑑の作成や使用を認めるものや、シリアルナンバーを付与するものもあります。
セキュリティに気を配った有料ソフトを利用することで、取引先からの信頼度向上も期待できるでしょう。
ただし、有料ツールも完璧とは言えません。ツールを提供している企業はもちろん、使用者のパソコンにも不正アクセスが100%ないとは言い切れないからです。最悪の場合、ツールに登録している個人情報や、取引書類そのものを盗まれてしまう危険性もあると想定しておく必要があります。そのため、有料サービスを利用するのであれば、書面取引におけるセキュリティやパソコン本体のセキュリティ対策を見直して、複数のツールを活用することも検討すべきです。
電子印鑑に関してよくある質問
電子印とは何ですか?
電子印鑑(電子印)とは、オンライン上で捺印ができるデジタルの印鑑をいいます。デジタルの契約書や電子文書などに捺印でき、本物の印鑑と同じように使用できるのが特徴です。従来の業務フローを削減したい企業や、環境に配慮してペーパーレス化を進める企業の間で取引の電子化が進んでおり、それに伴って電子印鑑の普及も拡大しています。
電子印鑑に法的効力はある?
電子印鑑・本物の印鑑が持つ効力に違いはありません。従来通り、契約書や請求書・領収書などあらゆる書類に捺印可能です。
ただし、電子・本物の印鑑のどちらも、捺印自体に法的効力はなく、捺印の有無で取引の成立が決まるものではありません。印鑑は、承認や同意などの意思表示として利用されるものだと認識しておきましょう。
電子印鑑は無料で作れる?
電子印鑑は誰でも無料で作成が可能です。Officeソフトを活用して図形と文字入力を組み合わせて作成する方法もあれば、印影をスキャンして画像データを作成する方法もあります。
ただし、無料で作成した電子印鑑は、複製や不正利用などのセキュリティ面でリスクがあるため注意が必要です。
まとめ
電子印鑑は、従来の業務を大幅に効率化できるとして急速に導入が進んでいます。無料ですぐに作成可能なため、気軽に導入できる一方、安全面・信頼面での問題も指摘されています。もし企業として導入を検討するのであれば、セキュリティ対策が備わった有料サービスの利用や、電子取引まで一貫して管理できるツールの活用なども検討しましょう。
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