BCP(事業継続計画)とは?策定の手順や注意点をわかりやすく解説
BCP(事業継続計画)とは
BCPは事業継続計画のことであり、Business Continuity Planの頭文字を取ったものです。災害やテロ、システム障害など業務継続が困難な危機的状況に陥ったときでも、重要な業務を継続できるよう対策を用意する計画です。
日本でも東日本大震災以降にBCPの重要性が注目され、導入する企業も増えてきました。内閣府もBCPを推奨しており、特定の業種ではBCPの義務化が進められています。
BCPは地震や豪雨による水害などの自然災害への防災対策とは異なり、どのような状況下でも事業を継続させることに焦点を当てた計画です。BCPを策定しておくと、緊急事態でも事業を継続させられ、顧客や株主の信頼を得られます。
BCPの必要性
BCPが策定されていないと、事業活動を継続することが困難になり企業の損失が大きくなるリスクがあります。また、事業再開までの期間が長引けば、顧客が競合他社に流れる可能性もあるでしょう。企業は事業活動ができずに利益が減るため、事業再開できるようになったときには事業規模を縮小せざるを得なくなったり、最悪の場合倒産したりする可能性もあります。
BCPは、従業員が安全な環境で働くためにも必要です。BCPを策定しておけば緊急時でも従業員の雇用を守り、安心して働ける職場環境を提供できます。
また、介護業では2024年からBCPの策定が義務化されます。どのような状況でも、介護を必要とする人たちが安定したサポートを受けられるような仕組み作りが求められています。
BCP策定の手順
実際にBCPを策定するときの手順について詳しく見ていきましょう。緊急事態の際に迅速に事業継続ができるよう、実用的なBCPを作成する必要があります。
ステップ1.BPCの方針・目的を設定する
最初にBCPの方針や目的を設定しましょう。企業の経営理念や基本方針をもう一度振り返り、企業が目指すものを再認識することが大切です。お客さまを第一に考える、自社で働く従業員全員が幸せでいるなど、それぞれ創業者や経営者の思いを反映したモットーや方針があるでしょう。
次に理想のBCPについて話し合います。BCPを作ることで、自社にとってどのようなメリットがあるのか、企業が目指す目的について従業員全員が共通の認識を持てるようにしましょう。
BCPに対して従業員が共通の理解を得られれば、BCPを発動することになった場合も従業員ひとりひとりがBCPの目的のために適切な行動を取れます。
BCPを発動するときは、危機的状況に陥っているときです。従業員が混乱せず、冷静に対処できるようにするためにも、BCPの方針や目的は最初にしっかり立てておきましょう。
ステップ2.業務とリスクを洗い出し、優先順位を付ける
次に、自社で日々行っている業務を洗い出して、緊急時に最も優先して継続する必要がある業務に優先順位をつけていきます。BCPではこれを中核事業といいます。
中核事業の洗い出しは、さまざまな側面から行うとよいでしょう。たとえば、自社の中で最も利益を生み出している事業や、止まってしまうと影響が大きく甚大な損害が出てしまう可能性のある事業、株主や市場の評価を維持するために継続するべき業務など、さまざまな中核事業があるでしょう。
また緊急時に人手や物資が不足した状況で、優先させるべき事業についても考えてみてください。
業務だけではなくリスクについても洗い出しを行います。地震・台風・水害・火災などの自然災害のほかにも事件・事故、伝染病の流行も考えられます。また、システム障害やサイバー攻撃のリスクもあるでしょう。起こりうるすべてのリスクを書き出し、どのくらいの損害が出るかを計算します。
ステップ3.具体的な対応策を決める
業務とリスクを把握したら、BCPの具体的な対策や対処法を検討します。危機的状況に陥ってから通常の業務が行えるようになるまでの期間を、被害状況の確認、代替による応急処置、復旧作業の3つに分け、施設・設備、人員、資金の調達、情報の内容を細かく決めていきます。
またBCPを発動した後の体制や、指揮を取る人物や社内の体制も決めておく必要があります。BCPの内容が決まったら、全従業員に周知しましょう。そのほかにも、取引先や協力企業との連携も欠かせません。
BCPを運用する際の注意点
BCPを運用するときの注意点について考えていきましょう。BCPは策定すれば終わりではありません。危機的状況に陥ったときに効果的にBCPを発動するためには、定期的テストや改修を行ったり、社内教育を継続する必要があります。詳しく見ていきましょう。
BCM(事業継続マネジメント)を戦略的に実施する
BCM(事業継続マネジメント)とは、企業がビジネスコンティニュイティ(BC)に取り組むときに事業継続計画を策定し、導入、運用そして見直しを行う統合的なマネジメントをいいます。
BCPは緊急時の事業継続のために策定するものですが、BCMはBCPをどのように社内に浸透させて戦略的に活用するかをマネジメントする方法です。
BCPを決めてあっても発動が遅れたり、訓練が不十分または現場への周知や代替案が適切に実施できないと、BCPの計画通りの事業継続が行えない場合があります。BCPを策定するとともに、BCMを戦略的に実施することで復旧まで効率的に事業活動を継続できます。
BCPの内容を定期的に見直す
BCPを策定するときは、完璧な計画を立てることは難しいと考えておきましょう。災害や不測の事態は、いつどのようにやってくるかわかりません。あらゆる可能性を考えてBCPを想定しても、完璧なものを作るのはほぼ不可能です。
また、BCPを発動してみて初めてわかる問題点や課題点などもあるでしょう。BCPを策定した後は、BCPを実施する機会がなくても定期的にテストを行い、課題を見つけたうえで計画を改善していく必要があります。
もし実際にBCPを発動する機会があった場合は、事態が収束した後でどのような問題点があったか、新たな課題がなかったかを振り返り、BCPの見直しや改善を行うようにしましょう。
リスク発生から復旧までの流れを綿密にイメージする
リスクの発生から復旧までの流れを、被害状況の確認、代替による応急処置、復旧に分けて具体的に細かくイメージしましょう。
緊急事態が起きたときに、最初に行うのは被害状況の確認です。どのような被害がどの程度広がっているのかを把握します。
次に、従業員の安否確認も行いましょう。本社とは離れた工場や現地で従業員が業務にあたっている場合は、自動で従業員の安否確認連絡を配信するシステムを導入しておくと迅速な対応ができます。
復旧までの間は、代替手段としての応急処置を行います。不足している人員や機能していない設備などを代替である程度補い、事業を継続できる仕組みを事前に構築しておきます。業務を継続するために必要な人数や資材、設備をあらかじめ代替手段として把握し、準備しておきましょう。
また、リモートワークへの切り替えをスムーズに行えるように整備しておくことも大切です。
最後にダメージを受けた部分を復旧し、平常の稼働に戻していきます。復旧するときには、もとの設備やシステムの設計や設定、稼働状況などを正確に確認する必要があります。重要な情報や業務に必要なものは、データを保護したりバックアップを取ったりして対策を行ってから復旧作業に取りかかります。
BPCのよくある質問
BCPと防災計画は何が違う?
防災計画は、台風や地震、火災、感染症、事故など、起こりうる災害をなるべく防ぐための計画です。一方でBCPは、災害が起きて実際に被害が生じた後に、事業活動の継続や早急な復旧を行うための計画です。
防災計画が災害を未然に防ぐことに着目した計画であるのに対して、BCPは災害発生後のための計画です。防災計画もBCPも企業のリスク管理には重要なので、早めにそれぞれの計画を立てておくとよいでしょう。
BCPを策定している企業はどのくらい?
東日本大震災の後、BCPの重要性を認識した企業は多く、さらにコロナによって事業継続のあり方を大きく変更せざるを得なくなったケースも少なくありません。
株式会社NTTデータ経営研究所の調査データによると、BCPを策定している企業は43.5%、策定途中の企業を含めると64.9%が導入しています。地域別で見るとBCPの導入が最も進んでいるのは関東で、BCP策定済みと策定中を合わせて68.9%です。一方、最も導入が遅れているのが北海道で、策定済みと策定中を合わせて51.2%となっています。
また、BPCの策定率は大企業の方が高いですが、近年は小規模な企業でも導入率が高まっており、国内の企業全体にBCPの重要性が浸透していることがわかります。
参考:「東日本大震災発生後の企業の事業継続に係る意識調査(第5回)」3.11から8年、策定したBCPが機能した企業は1.7倍に増加 風水害を想定したBCPは増加傾向続く | NTTデータ経営研究所
BCPを策定するメリットは?
BCPを策定するメリットは、企業の社会的価値の向上、従業員が安心して働ける安全な職場環境作り、倒産のリスク軽減などがあげられます。
BCPを策定している企業は、リスクマネジメントができる企業と判断されます。顧客や取引先企業、株主などからも高く評価され、ひいては企業の社会的価値も向上します。
また、安全な職場環境を確保することで従業員は安心して働けます。さらに、非常時にも業務を継続できるため、企業の倒産や事業縮小などのリスクを減らせるでしょう。
まとめ
BCPとは、企業が危機的状況に陥ったときに、重要な業務を継続して行えるよう計画を立てることです。東日本大震災後、BCPの重要性の認識が高まりBCPを策定する企業も増えました。
BCPを策定した後は、継続的にテストを行い計画の課題を洗い出し、改修する必要があります。またBCMを戦略的に行うことで、より迅速に効果的な対応ができます。企業や従業員を守るためにも、もしものときに備えてBCP策定を検討し導入するとよいでしょう。
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